平成19年に医療法改正があり、定款変更がなされているはずが何も変更されていない定款を見かけることがあります。
つい最近も事務所移転のご相談があり定款を見せて頂いたら、定款が設立当初のままで、何も変更されていませんでした。
都道府県の担当者の話では、すべての医療法人を管理するのは難しく、事務所移転や診療所開設等、許認可を要する申請時において、各種届出が提出されているかどうかを確認するそうです。
【医療法に基づく各種届出について】
事業報告書等や役員変更届等は、医療法に規定された医療法人の義務であり、医療法の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした場合においては、医療法人の理事、監事又は清算人に対する罰則もあります。
医療法人としての医療法の義務を認識し、法令を遵守した法人運営をしましょう。
【役員変更届】
医療法人は、役員に変更があった場合(任期満了による重任の場合を含む。)は、医療法人の役員変更届を、遅滞なく、都道府県知事あてに提出すること。
※役員に変更があった場合
1)新たに役員に就任する場合
2)任期途中で役員を辞任する場合
3)任期満了により役員を重任する場合・退任する場合
4)役員が死亡した場合
5)役員が改姓した場合・役員の住所が変更になった場合
【決算届】
医療法人は、毎会計年度終了後2月以内に、事業報告書等を作成し、理事はそれを監事に提出しなければならない。監事はそれを受けて、監査報告書を作成し、会計年度終了後3月以内に社員総会又は評議員会及び理事会に提出する。
その後、医療法人は、毎会計年度終了後3月以内に、事業報告書等及び監事の監査報告書を都道府県知事あてに提出すること。
※事業報告書等提出書
1) 事業報告書
2) 財産目録
3) 貸借対照表
4) 損益計算書
5) 監事報告書
平成27年9月28日に公布された「医療法の一部を改正する法律」により、医療法及び医療法施行規則が改正され、平成28年9月1日及び平成29年4月2日と段階的に施行されます。(厚生労働省資料より抜粋)
「地域医療連携推進法人制度の創設」と「医療法人制度の見直し」
1. 地域医療連携推進法人制度の創設(平成29年4月2日施行)
地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するため、病院等に係る業務の連携を推進するための方針を定め、医療連携推進業務を行う一般社団法人は、都道府県知事の認定を受けることができる。
2. 医療法人制度の見直し
1)医療法人の経営の透明性の確保及びガバナンスの強化に関する事項
□ 事業活動の規模その他の事情を勘案して厚生労働省令で定める基準に該当する医療法人(負債50億円以上又は収益70億円以上の医療法人・負債20億円以上又は収益10億円以上の社会医療法人)は、厚生労働省令で定める会計基準(公益法人会計基準に準拠したものを予定)に従い、貸借対照表及び損益計算書を作成し、公認会計士等による監査、公告を実施。(平成29年4月2日施行)
□ 医療法人は、その役員と特殊の関係がある事業者(医療法人の役員・近親者や、それらが支配する法人)との取引(当該事業収益又は事業費用1,000万円以上であり、かつ総事業収益又は総事業費の10%以上を占める取引等)の状況に関する報告書を作成し、都道府県知事に届出。(平成29年4月2日施行)
□ 医療法人に対する、理事の忠実義務、任務懈怠時の損害賠償責任等を規定。
理事会の設置、社員総会の決議による役員の選任等に関する所要の規定を整備。(平成28年9月1日施行)
2)医療法人の分割等に関する事項(平成28年9月1日施行)
医療法人(社会医療法人、特定医療法人、持分あり医療法人等を除く。)が、都道府県知事の認可を受けて実施する分割に関する規定を整備。
3)社会医療法人の認定等に関する事項(平成28年9月1日施行)
二以上の都道府県において病院及び診療所を開設している場合であって、医療の提供が一体的に行われているものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものについて、全ての都道府県知事ではなく、当該病院の所在地の都道府県知事だけで認定可能。
社会医療法人の認定を取り消された医療法人であって一定の要件に該当するものは、救急医療等確保事業に係る業務の継続的な実施に関する計画を作成し、都道府県知事の認定を受けたときは収益業務を継続して実施可能。
理事会に関する規定が置かれていない場合には、改正法附則第6条の規定に基づき、施行日から起算して2年以内に定款又は寄附行為の変更に係る認可申請をしなければならないこと。
理事会に関して変更前の定款例又は寄附行為例に倣った規定が置かれている場合は、この限りでないこと。
社会医療法人及び病院を開設する医療法人については、改正後の定款例又は寄附行為例に倣った定款又は寄附行為の変更に係る認可申請を速やかに行うことが望ましいこと。
それ以外の医療法人については、当分の間、必ずしも定款例又は寄附行為例と同様の規定を設けなくても構わないこと。